2021年の読書歴を振り返る②

2021年も終わるので、改めて今年1年間の読書歴を振り返ってみたいと思います。
2021年から、Notionを利用して読書録をつけ始めました。前記事では全体的な振り返りを行ったので、本記事ではテーマ別に印象に残った本を紹介していきます。

1. 文学

今まで文学作品はあまり読んでいなかったですが、今年になって海外文学にハマり、文学評論と合わせて40冊程度読みました。

①『百年の孤独』ガルシア・マルケス
1冊目はノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスの『百年の孤独』。史上最高の文学として紹介されることも多い作品です。ある一族の7代200年にも渡る物語は非常に長く、これといったストーリー展開がないまま、神話を語るかのように淡々と話が進んでいきます。男の登場人物には、アルカディオとアウレリャノが交互に命名され、誰の話なのかをつかむだけで大変です。以下は読書録からの引用です。

数々の戦争と搾取、災害の果てに、一族の運命は「豚のしっぽ―破滅の象徴―」に向けて収束していく。すべては最初から決まっていて、時間は流れているようで流れていない。結末が分かっているのに、長い物語にただ引き込まれる。
これほど壮大な世界が一人の人間から生み出されたことに驚嘆させられる。過去最高の文学作品と称される理由はよくわかった。

とても面白いという作品ではないのですが、結末に向かって収束していく描写は見事ですし、これだけの世界が一人の人間から生み出されたことには驚きを感じました。

②『1984年』ジョージ・オーウェル
2冊目はジョージ・オーウェルの『1984年』。ディストピア小説として事あるごとに名前が上がる非常に有名な作品です。 以下は読書録からの引用です。

時は1984年、人々”プロール”と”党員”に分断され、党員は四六時中党に監視される。”テレスクリーン”があちこちに配備され、どんな反逆的な行動も許されない。”思考犯罪”という言葉があり、反抗的な思考をしたとみなされると、存在そのものが消去、すなわち”蒸発”させられてしまう。文字通り、”Big Brother Watches you”の世界。そうした恐ろしい権力の維持を可能にしているのは、徹底的な検閲、文字の簡略化と思考の略奪、絶え間ない歴史の修正にある。(中略)
この本では何よりも、全体主義体制を実現させるための機構のリアルさに感服させられる。名著には読み継がれている理由がある。そして、これからも読み継がれてほしい。いつだって時代はBig Brotherを作りたがる。それを止められるのもまた人間しかいないのだから。

この物語は独裁的な党の主張に疑問を抱いた主人公の物語ですが、とにかく権力を維持するための仕組みの描写が見事です。権力を求めるのは人ですが、権力の暴走を止めるのも人だと感じます。100年後も、「こんな世界にはなっていなくてよかった」という感想と共に読み継がれていてほしい作品です。

③『源氏物語の楽しみかた』林望
3冊目は古文の解説書から。元々百人一首は好きで今でもほとんど覚えていますが、日本の古文関係の本も数冊読みました。本書では、日本古文で最も有名な源氏物語について、深い洞察がなされます。 以下は読書録からの引用です。

光源氏に最も深く長く愛された紫の上については、本書で最も紙幅を割いて語られる。光源氏の浮気癖に悩まされつつも、それとなく諫める気位の高さ。明石の姫君を自分の子どものように育てる優しい心。そんな気位が高く、美しい理想の女性、光源氏の最愛として描かれる紫の上の人生は幸せだったのだろうか。苦しみも多かった人生だと思うが、育てた明石の中宮からは最大の敬意をもって看取られ、死後は光源氏に限りなく悼まれたーそのことをもって紫の上の人生は報われたと言えるかもしれない。源氏物語は面白い。

源氏物語は女性たちの死の物語でもあり、光源氏に愛された女性たちは皆儚くも世を去って行きます。それぞれの登場人物の人生に焦点を当てて深く読んでみると、そこには愛や幸福、無常さがある。解説付きでで読む古文は、大人になった今でも楽しめるものだと思います。

④『教養としてのアメリカ短篇小説』都甲幸治
4冊目はアメリカ文学の解説書。アメリカ文学と言えば、トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』、フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』、ヘミングウェイの『老人と海』、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』など多く読みましたが、本書は文学作品からアメリカを読み解いた解説書です。 以下は読書録からの引用です。

まず無視できないのは人種問題である。(中略)「劣った」「暗い」黒人に対置する形で「優れた」「明るい」白人のアイデンティティを築いている。そして、それを維持するために戦争・暴力が繰り返されている―。それがアメリカ社会の特徴の一つであり、文学はそうした「アメリカらしさ」から独立してはいられないのだ、と筆者は説く。
マーク・トウェインの『失敗に終わった行軍の個人史』も、戦争賛美・英雄譚に対する批判と読むこともできる。アンダーソンの『手』では、同性愛を疑われた青年が排除されるが、これは「男らしさ」を強調するアメリカ社会を浮き彫りにしている。フィッツジェラルド作品からは過剰なセルフコントロール信仰がはびこる資本主義社会アメリカが見えてくる。(中略)
アメリカは一方で強力な社会であるが、その裏には人種差別や行き過ぎた資本主義、南北の分断といった様々な問題・矛盾を抱えている。文学はそうしたものから独立してはいられず、時にアメリカ社会を痛烈に批判してきた。

文学はその作者が生きた国と時代を映す鏡でもあります。物語としても面白い作品が多いですが、裏にある社会に思いを馳せることで、一層深く文学を読むことができると感じました。
今年1年間で文学の魅力がよく分かりました。人生を豊かにしてくれるお供として、これからも文学作品を読んでいきたいと思います。

2. 美術・宗教・神話

都内で美術展がある度に出かける程度には美術好きですが、関連する本も15冊程度読みました。絵を紹介している美術の本に関しては特にどの本というのはありませんが、絵が多く載っている本を本棚に置いておき、たまに読み返すのは非常にオススメです。

⑤『スペキュラティヴ・デザインの授業』長谷川愛
美術関連で印象に残った本として一冊だけ紹介します。今まで現代アートにはあまり関心がなかったのですが、この本を読んで考え方を改めました。以下は読書録からの引用です。

スペキュラティヴ・デザイン。それは、常識を疑い、作りたい未来の価値を形にすること。社会に対して課題を提起すること。(中略)
例えば、筆者は(不)可能な子どもという作品を世に出した。女性の同性カップルの顔の画像を用い、彼女たちの娘が存在する場合の家族写真を作成する。生物学的に彼女たちは子どもを作ることはできないし、現在同性カップルは養子を持つこともできない。それでも、”家族写真”からは、こんな世界もあり得ると感じさせられる。他にも、イルカと人間の子どもができたら―というアート作品もある。生殖は種に囚われる必要があるのか?ここでも既存の常識を超えていく。 こうした現代アートを通じ、アーティストは課題を提起し、目指すべき社会を考えるための議論を巻き起こすことができる。(中略)よりよい社会を目指すためには、アートの力は大事なのかもしれない。

既存の常識に囚われない現代アートは、視覚的な美しさを追求している伝統的な美術作品とは全く異質なものですが、それ自体非常に興味深いものだと感じました。
今後も美術関連の情報は収集していきたいと思います。

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