2021年の読書歴を振り返る④

2021年も終わるので、改めて今年1年間の読書歴を振り返ってみたいと思います。
2021年から、Notionを利用して読書録をつけ始めました。前記事では全体的な振り返りを行ったので、本記事ではテーマ別に印象に残った本を紹介していきます。

6. 経済学、金融、国際開発

開発経済学と金融は大学時代の専攻でした。再読含めて20冊程度読んでいます。途上国がどのように発展していくのかは引き続き考えていきたいテーマです。本業で金融機関に関わっているため、金融関連の本も意識的に読みました。

①『ドーナツ経済学が世界を救う』ケイト・ラワース
経済学から1冊だけ。SDGsが叫ばれ、環境問題の脅威がリアルになってきた時代、人類はどこに向かっていくべきかを書いた本です。以下は読書録からの引用です。

目指すべきはドーナツの図―すなわち、社会的基盤を充足させつつ、環境的基盤を損なわない範囲―に経済を収めることだ。筆者は今まで経済学者によって作られてきた物語を強く批判する。①市場は完璧ではない。②企業は株式価値の最大化ではない目的を持つ必要がある。③国家は大きな役割を持つ。④家計や社会の貢献を無視してはならない。(”社会はある”)⑤地球は全ての基盤で資源は無尽蔵ではない。(中略)
最後に筆者は、ロストウの経済発展モデルにおいて、成長しないモデル(サーキュラーエコノミー)に”着陸”させるべきだと提言する。

ドーナツの図は視覚的にわかりやすく、これから人類が一致団結して立ち向かっていくうえで重要な指針になりそうです。関連して、脱成長を説いた斎藤幸平著『人新世の資本論』、資本主義の理念の欠如を批判したエドワード・スキデルスキー&ロバート・スキデルスキー著『じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路』、ダボス会議で話題になったクラウス・シュワブ&ティエリ・マルレ著『グレート・リセット』なども読みました。少なくとも今の新自由主義的な資本主義が多くの矛盾を抱えていることは間違いありません。人間社会はどこに向かっていくべきか、大きな宿題を課せられているように思います。
また、特定の1冊というものはありませんが、本業に関連して金融の未来を予想した本も何冊か読みました。伝統的な金融機関は低金利やフィンテックの台頭などで苦境にあります。デジタル化を進め、顧客に最大の価値を提供する、そこに生き残りの道があるといことはどの本でも共通して言われていることですが、「言うは易し」ということは最近痛感しているところです。

7. 歴史

歴史は昔から興味があり、今年度も何冊か読みました。

②『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ
歴史からも1冊だけ。言わずと知れた有名な書です。人類がなぜ生物界の覇者になれたのか、その理由を深い洞察で解き明かしていきます。以下は読書録からの引用です。

当初ホモ・サピエンスはサバンナの弱者で、死肉を漁る取るに足らない存在だった。そこから、他の人類種を全て滅ぼし、過去に例がないほど生態系を破壊するに至らしめた最初の力は認知革命だ。虚構の物語を作り出し、顔も知らない人々が協力し合うことで、個々の力では劣っていても生態系の覇者になることができた。(中略)
筆者に言わせれば、ホモ・サピエンスは特別でもなんでもはなく、小さな偶然によって大きな力を手にした一つの種に過ぎないのだ。そして、家父長制に全く根拠がないのと同じように、人権や貨幣といった虚構にも根拠はない。ただし、虚構を信じることがホモ・サピエンス最大の力である。

虚構こそが人類を結びつけ、生物界の覇者たらしめた力である、と。世界的な知性による洞察の深さには驚かされます。
こうした大きな物語だけではなく、個別の期間、個別の地域の歴史にもそれぞれの魅力があります。来年も色々な歴史の物語を知っていきたいなと思います。

8. 国際問題、政治

国際問題や政治学には興味がありますが、専門性が薄く、あまり読めていないところです。何冊かは読んでいます。

③『保守主義とは何か』宇野重規
政治関連で1冊だけ紹介します。政治について意見を持ちつつも、それを支える思想的基盤について深く知らないことは問題意識としてありました。本書は新書ですが、保守主義についてわかりやすく説明しています。以下は読書録からの引用です。

保守主義の源流はフランス革命に反対したエドマンド・バークだと言われる。バークは、イギリス議会主義による漸進的な自由の拡大には賛成しつつも、フランス革命の急進的な改革には反対した。イギリス議会主義の伝統という守るべき価値があっての保守主義であったのだ。 進歩があっての保守主義は、時代と共に必然的に変質する。(中略)
20世紀後半になると、いわゆる大きな政府、社会民主主義的なモデルが進歩の考え方として台頭する。これに異を唱えたのがカークである。(中略)アメリカ保守主義は、宗教的伝統の強調と、独立した個人の強調(経済的リバタリアニズム)に特徴があり、ヨーロッパ的な保守主義とは一線を画している。(中略)
先が見えない時代において、歴史的に築き上げてきた社会の伝統、価値観を大切にする保守主義に求められることは多い。一方で、保守主義は、安易な伝統主義に陥るのではなく、多様性に開かれ、自由で創造的なものであるべきだ、と。

進歩あっての保守主義は変質し続けており、一般に保守といってもその内実は人によっても異なります。変革だけが全てではなく、保守の価値が求められる状況があることは間違いないと感じます。
政治・思想史についてはこれからも学んでいきたいところです。

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