『知ってるつもり――無知の科学』

基本情報

書名著者読了日評価分野
知ってるつもり――無知の科学スティーブン スローマン、フィリップ ファーンバックJanuary 20, 2021⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️Psychology

読書メモ

人類は自分が思っているより遥かに無知である―。本書のメッセージは極めて明快だ。ファスナーの例(ファスナーの構造について理解していると回答した人も、その実ほぼ理解していない)や政策の例(政策について説明させると、無知を自覚し、意見が穏健化する(宗教的なマターを除く))を通して、人間の錯覚・愚かさを見事に描き上げている。
なぜ人類はこんな知覚への過信をしているのか。それは、個人で考えず、コミュニティに知覚を依存しているから。このおかげで個人では決して実現できないレベルの認知的活動を実現できるようになった一方で、他者(AIを含む)に知覚を依存したゆえのリスクも顕在化しているのだ。
では、こうした”過信”に基づく愚かな意思決定からどうやって社会を守るのか。世の中の多くの人間は「説明嫌い」である。正しい意思決定のために必要なのは、十分な情報を与えることではなく、それぞれの人に専門家の言葉を聞く分別を身に着けてもらうこと。それが教育の役割で、一番必要なことなのだと筆者は説く。筆者の主張には大いに共感する。自分自身、知的に謙虚でありたいと改めて感じさせられた。
筆者は本文の最後、こう締めくくっている。「たまには錯覚も悪くない」。知的な過信がムーンショット的な目標を生むことも事実。深い思索から出てくる言葉は心に残った。

一言コメント

本書の内容を「無知の知」と一言でまとめてしまうと安易に過ぎますが、知的に傲慢になっていないか、常に自戒していたいと思います。
2022/3/5

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