基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ハックルベリー・フィンの冒険 | マーク・トウェイン | 2021年2月27日 | ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
ヘミングウェイは、”あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する”と述べた――1885年に書かれたアメリカ文学の傑作。主人公のハックは、一計を打って暴力をふるう父親の下から逃げ出し、逃亡奴隷ジムと川下りの旅に出る。道中では、”名誉”を追い求める愚かな報復合戦への遭遇、難破船での冒険、2人の詐欺師(王様と公爵)との出会いなどを経る。最後には前作の主人公トム・ソーヤとジムを解放するための策を講じる。(実際にはジムは既に所有者の遺言によって自由の身だったのだが。)
1作を通して印象的なのが、ハックの葛藤である。ジムに対して深い友情や愛情を感じる一方で、黒人奴隷を所有することは当然で、奴隷を逃がす手助けをすることは悪―罪のない所有者への加害―であると感じ、ジムを密告しようとさえ考える。現代の感覚からすると、後者の感情がそれほど深いこと、ジムへの友情と奴隷制度への肯定が共存していること―ハック目線で語られる文章では、黒人奴隷は蔑称で呼ばれ続ける―をすぐには理解できないが、それがその当時の現実だったのだ。全く愉快な冒険譚であると同時に、見事な心理的な葛藤を描き、新しい価値観に出会える本書は名作というほかない。
一言コメント
子供の頃以来、初めてまともに読んだ海外文学かもしれません。子供向けの冒険譚とは言うものの、決して読みやすい本ではありません。むしろ、当時の人種差別のリアルがハックの葛藤から見えてくる描写などは、大人になってから読むからこそ分かる内容でしょう。海外文学にハマっていったきっかけになった本という意味で、非常に記憶に残っています。
2022/3/6