基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見 | ジェニファー・ダウドナ | 2021年2月7日 | ⭐️⭐️⭐️ | Science |
読書メモ
夢の遺伝子編集技術CRISPR-Cas9、その創始者がCRISPRについて語りつくした本。CRISPR-Cas9は、当初から遺伝子編集技術を作りたいという意図をもって研究されたものではなかった。細菌内のCRISPRという特殊な構造を研究する中で、偶然遺伝子編集への応用可能性が発見されたのだ。そんなCRISPRにより、遺伝子編集技術は極めて簡易―高校生でもできるくらい―になった。
筆者は後半で、CRISPRが巻き起こす重大な生命倫理問題にも果敢に踏み込んでいる。筆者の提言はこうだ。生殖細胞以外の遺伝子編集による遺伝子由来の病気の解決、これは間もなく実現できるはずだし、病気の苦しみを考えても認められるべきだ。一方、生殖細胞の操作―それは人類の遺伝子について後世にわたって不可逆的な影響をもたらす―については、十分議論された後でないと実施してはならない。
想像を超えるCRISPRの力に空恐ろしくなり、トランスヒューマニズム的な未来を感じさせられるが、筆者のような科学者が倫理的な問題に逃げずに向き合い、開かれた議論を巻き起こそうとしていることには勇気づけられる。人類が科学を正しく使う未来が来ることを願う。
一言コメント
CRISPR-Cas9はノーベル化学賞を獲ったことで記憶に新しいところです。簡単に操作できる遺伝子編集技術は、大きな可能性と大きな危険性を秘めています。正しく知り、正しく利用するよう訴えていく必要がありそうです。
2022/3/6