『1984年』

基本情報

書名著者読了日評価分野
1984年ジョージ・オーウェル2021年3月18日⭐️⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ ※ネタバレを含みます

権力の恐怖を描いた作品としてあまりにも有名だが、そのリアルさにとにかく圧倒される。時は1984年、人々”プロール”と”党員”に分断され、党員は四六時中党に監視される。”テレスクリーン”があちこちに配備され、どんな反逆的な行動も許されない。”思考犯罪”という言葉があり、反抗的な思考をしたとみなされると、存在そのものが消去、すなわち”蒸発”させられてしまう。文字通り、”Big Brother Watches you”の世界。そうした恐ろしい権力の維持を可能にしているのは、徹底的な検閲、文字の簡略化と思考の略奪、絶え間ない歴史の修正にある。主人公ウィンストンは歴史の修正に携わる党員だが、党の主張に疑問を抱き、ジュリアと恋に落ちる。彼はオブライエンに惹かれ、伝説的な反政府組織に加入する――と思いきや、組織は存在せず、オブライエンは党の人間だったのだ。ウィンストンは凄惨な拷問を受け、ジュリアを裏切り、”2重思考”を身に着ける。そして最後にはこう言うのだ。”Big Brotherを愛している”、と。救いのない結末に裏切られた。この本では何よりも、全体主義体制を実現させるための機構のリアルさに感服させられる。名著には読み継がれている理由がある。そして、これからも読み継がれてほしい。いつだって時代はBig Brotherを作りたがる。それを止められるのもまた人間しかいないのだから。

一言コメント

権威主義体制の恐怖を描いた有名な作品です。実際に読んでみると、そこに書かれる権力を維持するための仕組みの見事さに驚かされます。臆面もなく嘘が垂れ流され、権威主義の恐怖をこれでもかという程感じさせられている2022年、今こそ読むべき本ではないでしょうか。『1984年』が完全に時代遅れになる日が来ることを願います。
2022/4/30

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