基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ソラリス | スタニスワフ・レム | 2021年8月17日 | ⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
この物語は、言うなれば未知との出会いを描いたものである。ただし、人類の想像を超えた圧倒的な未知との―。
主人公ケルヴィンは研究のために惑星ソラリスに到着する。彼はそこで変わり果てた研究者たちに出会って困惑するが、彼もやがて不可思議な現象に飲み込まれていく。過去の恋人が実体化し、周りから離れない。彼は過去の思い出に苦しみながら、なんとか事態に対処しようとする。
この現象は恐らくソラリスの海が巻き起こしたものである。ソラリスの海は長年の研究により、様々な不可解な動きを示すことが分かっており、まるで生命のように振る舞うと言われてきた。ソラリスという「生命」とのコンタクトがまさに今回の現象であるが、その意図や目的は全く分からない。そもそもソラリスが人類が考えるような生命なのか、ソラリスに意図があるのかさえ分からない。全てが未知、圧倒的な未知とのコンタクトなのだ。
ソラリスの物語は主人公がなんとか現象を克服したところで終わる。物語を通じてソラリスに関する科学的報告ばかりが淡々と描かれ、現象の描写はただただ不気味である。最後までソラリスを巡る未知への回答は何もない。はっきり言って物語として面白いものではない。
それでも、圧倒的な未知と出会ったときそこに何が生じるか、という「未知」の問いに対して真に向き合って生まれた本作は、色褪せない魅力を持っていることもまた事実である。
一言コメント
SFの古典として有名な作品。物語として面白いわけではありませんが、人間の想像力の限界に挑んだ作品としては魅力的です。人類は真の未知に出会ったとき、どのような反応をするのでしょうか。
2022/5/1