『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』

基本情報

書名著者読了日評価分野
奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語三崎 律日2021年6月5日⭐️⭐️History

読書メモ

書物はその時代の価値観を反映する。現代から見ると全くおかしい内容の書物でも、書かれた時代は良書とみなされていることもある。本書は、奇書という独特のテーマから、歴史と価値観の変遷を読み解く。
『魔女に与える鉄槌』は、現代からすれば中世の魔女狩りに火を注いだ悪書であるが、”人々にはどうにもできない不運”があるという発想がなかった時代、魔女という分かりやすい悪に不幸の理由を求めるのはある意味合理的なことだった。サルマナザールの『台湾紙』は、稀代のペテン師によるデタラメだが、当時のヨーロッパ人がいかにアジアを知らなかったか教えてくれる。スウィフトの『穏健なる提案』の内容は狂気に満ちている。貧困層の子どもを富裕層に食べ物として売るという提案は当然受け入れられるものではなく、当然スウィフトも課題提起の意味で”穏健”なる提案をしているのだが、当時のアイルランドの悲惨な暮らしがよく分かる。
奇書は時代によって変わる。きっと現代の名著も、後世の人間からしたら奇書と言われるのだろう。でも、そんな価値観の変遷を含め、書物とは面白い。そう感じさせられた。

一言コメント

現代から見ると奇妙としか思えない過去の書物を紹介した本です。本の価値もまた時代と共に変わっていくというのが面白いですね。
2022/5/1

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