基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
社会学用語辞典 | 田中正人, 香月孝史 | 2021年6月19日 | ⭐️⭐️ | Sociology |
読書メモ
社会学の用語をイラストを用いながら分かりやすく解説する。最初に社会学を成立させたのは、コントやスペンサー、マルクス、デュルケームら。彼らは「社会は実在する」前提に立ち、社会の単線的な発展や社会に規定される個人を論じた。自殺という個人的に見える現象でさえ、社会の力を受けているのだ。この思想はマクロ社会学としてパーソンズの機能主義に受け継がれる。もう一方の思想がミクロ社会学で、ウェーバーは人間の行為によって社会が形作られると論じ、ジンメルは社会とは人間関係の集まりだと論じた。
リオタールが大きな物語の終焉、ポストモダンを宣言した時、マクロな社会を語るマクロ社会学は力を失ったのではないか。その帰結が「個人」に過度に注目する新自由主義であり、サッチャーの「社会はない」という言葉だったのではないか。大きな物語を失い、自由を強調した果ては、バウマンの言うように、リキッド・モダニティだ。
人類はどのようにして、社会を取り戻すことができるだろうか。そのヒントが、ポストモダンを超えた思想の中にあるように思える。ルーマンはミクロ社会学とマクロ社会学を発展的に統合し、個人の行動と社会は相互作用の中で変化していくと主張した。ギデンズは、現代はポストモダンではなく「再帰的近代」の時代であって、変化を続けているのだと主張する。
ポストモダンの先に、人類がよりよい社会を作る上での道を示す社会学は、悲惨な結末を招いた新自由主義の基となった経済学以上に重視されるべきなのではないだろうか。
社会学について大きな流れの理解が合っているかは自信がない。本書には当然それ以外の重要な思想(構造主義、ジェンダーなど)も多く掲載されている。ただ、少なくとも一つ間違いないと思うことは、「社会はある」ということ。そして、現代ほど社会学を学ぶべき時代はないということだ。
一言コメント
あまり触れてこなかった社会学の学び直しです。当時の読書メモでは、身の程を弁えずに社会学の大局的な流れをまとめようとしていますが、果たして合っているのかどうか、今になっても分かりません。社会とは複雑なもので、それほど分かりやすい流れなどというものはないのかもしれませんが。当時も書いているように、社会学ほど学ぶべき学問はないと思うのですが、近年では「実践的」な経済学に押されているように思えるのは残念でなりません。
2022/5/1