『シェイクスピア四大悲劇』

基本情報

書名著者読了日評価分野
シェイクスピア四大悲劇ウィリアム・シェイクスピア2021年8月18日⭐️⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ ※ネタバレを含みます

シェイクスピアの四大悲劇―それは文学史上に燦然と輝き続ける傑作たちだ。本書はオックスフォード英語辞典も参照し、シェイクスピアの四大悲劇を改めて日本語訳したものである。

①ハムレット
王子ハムレットは、父の亡霊から、叔父が王であった父を毒殺し、母と再婚したという事実を知る。彼は事の真相を明らかにするため、狂ったふりをして、劇によって叔父の反応を探る。劇は叔父を動揺させた、間違いなく彼は兄を殺し、兄の妃を妻にするという大罪を犯していた。ハムレットは叔父に対する復讐を決意するが、誤ってポローニアスを殺してしまったことで運命の歯車は狂い始める。ハムレットは追放され、父ポローニアスを失った最愛のオフィーリアは絶望の中で死ぬ。一計を案じて国に戻ったハムレットはオフィーリアの兄レアティーズと決闘し、その中で叔父クローディアス、母ガートルード、レアティーズ、そしてハムレットが次々に死んでいく。ハムレットの復讐は周囲を巻き込んで悲惨な結果に終わった。ハムレットは叔父の罪を知ってなお、行動に悩み、そのことが死者の数を増やした。そうは言っても、ハムレットの葛藤は極めて人間的なものである。普遍的な人間の葛藤が運命の歯車を狂わせ、悲惨な結末に収束していく。そこにはどこか人々を共感させるものがあったに違いない。

②オセロー
ヴェネツィア共和国に仕えるムーア人将軍オセロー。彼は人種的偏見の残る中、勇猛さで現在の地位を築いた。オセローは純粋無垢なヴェネツィア人の娘デズデモーナと結婚し、幸福を手にするが、オセローの旗手イヤゴーの陰湿な計画に絡みとられていく。イヤゴーは紳士ロダリーゴーや妻のエミリアの手を借りながら、副官キャシオーとデズデモーナが不義を犯しているという罪をでっち上げる。オセローは疑心暗鬼に囚われ、デズデモーナの必死の否定にも拘らず、彼女のことを遂に殺害してしまう。エミリアの活躍でデズデモーナが潔白だったという真実を知ったオセローは絶望し、最後には自ら命を絶った。オセローに最愛の妻に手をかけさせるという最悪の結末を招いたイヤゴーの陰謀はとにかく恐ろしい。人種的偏見がある中で、オセローは元々デズデモーナからの愛を疑う心がどこかにあったのかもしれない。疑心が疑心を呼ぶ描写は見事というほかない。

③リア王
老いたリア王は王位を3人の娘に分け与えようとするが、長女と次女がうまく歓心を買ったのに対し、3女はそれを拒絶したため、追放される。その後リア王は長女と次女の裏切りに合い、国を追放され、絶望の中放浪の旅に出る。この陰謀にはグロスター伯爵の庶子エドマンドが一役噛んでいた。彼は父を騙し、兄エドガーを追放させる。その後、長女ゴネリル、次女リーガンと結託し、父グロスター伯爵の視力をも奪い取る。そんな絶望的な状況の中、哀れなトムに身をやつしたエドガー、元忠臣のケント伯爵、3女コーディリアはリア王とグロスター伯爵の命を救い、長女・次女に対抗するべく反乱軍を起こす。最終的に長女、次女、彼女たちの夫、エドマンドは命を落とし、国の奪還に成功するが、戦乱の中3女コーディリアが死に、絶望したリア王も死んでいく。権力を巡る醜悪な陰謀は親子の情を切り裂いて、悲惨な結末を招く。純粋で善なるコーディリアも不条理にも命を奪われる。骨肉の争いはどの時代でもかくも醜いものだったに違いない。

④マクベス
将軍マクベスは魔女の予言を信じ、一計を案じてダンカン王を殺害、自ら王位に就く。しかし、その後彼は狂い、暴政を行うようになり、民の心は離れていく。マクベスにダンカン殺害を唆したマクベス夫人もまた、自らの罪に押しつぶされ、狂気に取りつかれていく。最終的に、ダンカン王の息子であるマルカムとドナルペイン、貴族マクダフに攻められ、マクベスは命を落とす。マクベスが狂っていく中で、そのきっかけを生んだ魔女の言葉だけが不気味に木霊する。成り上がった殺人者の狂気を見事に描き上げている。

一言コメント

シェイクスピア4大悲劇を一冊で。名前は知っていても読んだことはない人が多いと思いますが、読んでみるとやはり読み継がれている理由がよく分かります。どれも全く救いのない悲惨な物語ですが、そこに人生の悲しさを感じさせられます。
2022/5/4

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