基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学 | 本川達雄 | 2021年9月18日 | ⭐️⭐️⭐️⭐️ | Science |
読書メモ
「ゾウの時間、ネズミの時間」、本書は可愛らしいタイトルからは想像できないほど深い内容で、生物のあらゆる特徴を「サイズ」の観点から解き明かす。
生物界を支配しているのは比例則ではなく、累乗則だ。例えば、標準代謝量は体重のほぼ3/4乗に比例する。単位当たりの酸素消費量は、体重のマイナス1/4乗に比例する。これらを総括すると、生物によって心拍数は異なり、時間の流れ方は異なるが、一生で使うエネルギーは15億ジュールという不思議な事実が明らかになる。ゾウとネズミ、こんなにも異なっているのに、エネルギーという根本的なところに共通点があるのだ。
比例則ではなく累乗則で全てが支配される根本原因は、表面積は2乗に比例し、体積は3乗に比例する点にある。表面積は熱に関わり、体積は必要なエネルギーに関わる。
本書では他にも、行動圏の広さや分子の微小運動が影響する微小生物の器官などが議論される。共通するのは、生物はサイズに応じた異なる生存環境にあり、それぞれ合理的な戦略を進化させている、ということだ。
サイズという観点から生物を読み解くと、こんなにも見事な法則が見つかる。今まで考えもしなかった。自然は美しい。
一言コメント
タイトルは可愛いですが、内容は深いものです。サイズの観点から生物を見ると、見事な法則が見つかったり、それぞれのサイズにあった合理的な行動が見えてきたりします。前提知識ゼロで読めて、科学は面白いということがよく分かる素晴らしい本です。
2022/5/4