基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
断片的なものの社会学 | 岸政彦 | 2021年12月4日 | ⭐️⭐️⭐️ | Sociology |
読書メモ
この社会には、誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない「断片的なもの」がたくさんある。人の人生のほとんどは、そうした「断片的なもの」からできていると言ってもよい。本書は様々な人々の語りを聞いてきた社会学者である筆者が、そんな「断片的なもの」を復元しようと試みたものである。
それぞれの語りは、何でもない、人が知らない、ただしどこかに存在した人生そのものである。筆者はそうした語りを受けて人生とは何か考えていく。
きっと誰しも、「普通の幸せ」に縛られて、「何者にもなれない自分の人生」と直面して、どこかで生きづらさ・苦しさを感じながら生きている。筆者の語りからは、誰もがただ生きていられる、そんな社会への願いが感じられる。
「断片的なもの」は定量的に分析することができず、学問の対象にはなりづらいかもしれない。人の人生に欠かせないものだ。人という弱い存在が、せめて少しでも生きやすくなるために、この社会は何ができるだろう。
何か分かりやすい主張があるわけではなく、内容は決して「客観的」なものではない。それでも人の人生に大事な何かを教えてくれる重要な洞察が、本書には詰まっている。
一言コメント
社会で誰にも知られていない語りに光を当てた本。知らないだけで、この社会には色々な人生、色々な想いがあるんだなあと思います。そのほとんどは知ることさえないけれど、色々な人生があるということを知って生きていくことには意味があると思います。
2022/5/4