『地銀 構造不況からの脱出 ―「脱銀行」への道筋』

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書名著者読了日評価分野
地銀 構造不況からの脱出 ―「脱銀行」への道筋高田創2021年4月25日⭐️⭐️Finance

読書メモ

地銀が構造不況から脱するには何をすればよいのかを語った本。地銀は今まで、護送船団方式の下に守られ、預貸利ザヤから安定収益を上げられた。近年の低金利と金融セクターへの新規参入の影響で、その構造が崩壊しつつある。そこに追い打ちをかける可能性があるのがコロナである。コロナ禍で資本が毀損した多くの中小企業。無担保無利子の融資で繋いではいるが、サービス業で売り上げが吹き飛んだ分を取り戻すのは容易ではなく、今後信用リスクの拡大が生じる可能性がある。そうした中、地銀は何ができるのか。筆者は説く。「資本性資金を提供せよ、企業のパートナーとなれ、運用を重視せよ。変わるのは今だ。」と。政策も整備され、地銀が変わるための舞台は整った。これからの5年間が勝負である。まさにタイムリーな地銀救済、やり遂げなければ。

一言コメント

仕事がらみで読んだ銀行系の本です。地銀は本当に変われるのか、正念場ですね。
2022/4/30

『嵐が丘』

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書名著者読了日評価分野
嵐が丘エミリー・ブロンテ2021年4月25日⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ ※ネタバレを含みます

豊かな家に拾われたヒースクリフ。彼は家の子キャサリンに惹かれるが、その深すぎる愛は狂気を生み、恐ろしい復讐へと彼を駆り立てていく――。ヒースクリフを痛めつけた人だけではなく、周りの人々までも巻き込んだ復讐劇。人間かくも執念深くなれるのか―。そんな様子が、現在からさかのぼって家政婦ネリーの口から語られていく。現代の不思議な嵐が丘の様子がなぜ形成されたのか、それが徐々に解き明かされていく構成は見事というほかない。最後にはヒースクリフは復讐の虚しさを悟り、ひっそりと死んでいく。キャシーとヘアトンが結ばれ、ハッピーエンドで物語は終わる。
ヒースクリフは恐ろしい復讐に生きた男だが、せめてキャサリンの隣に埋葬されることで彼が救われていることを願う。

一言コメント

恋愛小説と呼ぶには主人公ヒースクリフが陰湿に過ぎるでしょうか。この作品は愛の物語であると同時に復讐の物語です。幸せな気分にさせてくれるような作品ではありませんが、確かに読み甲斐があります。
2022/4/30

『百人一首解剖図鑑』

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書名著者読了日評価分野
百人一首解剖図鑑谷知子2021年4月25日⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ

百人一首について解説した本。
100首を時系列で追っていくと、歌の変化を感じさせられる。粗削りで率直な心を表現した万葉時代。和歌の評価がまだ低かった平安初期を経て、和歌は摂関時代に全盛期を迎える。この時代は女官として仕えた女性たちによって、素晴らしい恋の歌が数多く詠まれた時期でもあった。その後、時代は武家の世、不安定な世に向かっていく。女官による恋の歌の数は減り、憂き世や詠み手の内面を歌った歌が増えていく。同時に、実体験ではなく、テーマに沿って詠まれた技巧的な歌が中心になる。最後は、敗北した後鳥羽院と順徳院の歌をもって無常観の漂う幕切れとなる。百人一首には、まさに和歌の歴史が表されているのかもしれない。
100首を読み終わった後、摂関政治の時代が、まさに「しのぶにもなほあまりある昔」に感じられるのは、気づかぬうちに定家の心に共感させられてしまっているのだろうか。

一言コメント

百人一首の本は数多く読んでいるので、この本もその中の一冊という以上の印象はありませんが、何冊読んでも飽きないというのが百人一首の魅力なのかもしれません。何冊解説書を読んでも、百首とその意味、作者、エピソードまで全部覚えるのは到底不可能なのですが、つい覚えたくなってしまうのは百人一首の沼にどっぶりハマってしまっているのかもしれません。
2022/4/30

『百年の孤独』

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書名著者読了日評価分野
百年の孤独ガルシア・マルケス2021年4月24日⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ ※ネタバレを含みます

100年の孤独―7代にもわたるブエンディア家とマコンドの歴史を描いたこの作品はあまりにも壮大で神話的だ。男の子孫は、アルカディオとアウレリャノの二つの名前が繰り返され、破滅を招くような似たような特徴を持っている。女たちは家を守る存在として描かれるが、崩壊に抗うことはできない。数々の戦争と搾取、災害の果てに、一族の運命は「豚のしっぽ―破滅の象徴―」に向けて収束していく。すべては最初から決まっていて、時間は流れているようで流れていない。結末が分かっているのに、長い物語にただ引き込まれる。
これほど壮大な世界が一人の人間から生み出されたことに驚嘆させられる。過去最高の文学作品と称される理由はよくわかった。

一言コメント

神話のように壮大で、とにかく長い、不思議な作品です。7代にも渡る物語は特定の主人公は不在で、明確なストーリー展開があるわけでもありません。それでも、結末に向かって引き込まれてしまうあたり、文学作品の持つ力を感じます。面白いかと聞かれると何とも言えませんが、文学を味わいたいのであればやはり読むべき一冊であると思いました。
2022/4/30