基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ジェネレーション・レフト | キア・ミルバーン | 2022年3月20日 | ⭐️⭐️ | Sociology |
読書メモ
気候危機や経済格差の中、若年層が左傾化し、ジェネレーション・レフトを形成している―、本書はそう主張する。
確かに、イギリスでは、ジェレミー・コービン、アメリカではバーニー・サンダースに代表される左派が躍進した。ただ、一方でトランプ当選もあり、ジェネレーション・レフトが本当に世界的な現象なのかはそれほど自明ではない。
そうした中、本書はまず「何が世代を作り出すのか」から議論を始める。今の若者世代(Z世代)の世代状態を作ったのは2008年の経済危機という共有された出来事であるのだ、と。2008年の経済危機は格差を浮き彫りにし、政府と結びついた金融セクターによって突き動かされる新自由主義経済の限界が明らかになった。そして、国際的なジェネレーション・レフトを作り出したのは2011年という「過剰の瞬間」だった。この年、アラブの春が吹き荒れ、オキュパイ・ウォールストリート運動が起こり、国際的な世代統一が生まれたのだ。この運動は大きな社会変革には結びつかなかったものの、この経験がジェネレーション・レフトの選挙論的転回を生み、2010年代後半の左派世代の選挙での躍進の下地を作った。
作者は最後にジェネレーション・レフトが勝利し、社会を変革するために必要なものは何か論じて本書を終える。キーワードは「コモン」だ。すべてのものをすべての人に広くいきわたらせる―、これによって、世代の保守化を防ぎ、真の社会変革につなげられるのだ、と筆者は主張する。
本書を読んだ後でも、日本の現状を見る限り、確固たるジェネレーション・レフトが形成されていると信じられるほど楽観的にはなれそうにない。時にそれはリベラルな大人の都合のいい妄想でさえあると思う。ただ、社会をすべての人たちのものにするための志を持った若者がいること自体は恐らく事実であり、その一員として何ができるか、自身問う必要があると改めて感じる。
一言コメント
私自身はジェネレーション・レフト的な価値観に共感するのですが、今の若者がジェネレーション・レフトを形成できているとは中々思えないのです。確かに価値観は変わってきているものの、それが社会改革には結びついていない。どうするべきか考えなくてはなりません。
2022/10/2