基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
トクヴィル | 宇野重規 | 2022年1月15日 | ⭐️⭐️⭐️ | Philosophy |
読書メモ
『アメリカのデモクラシー』を著し、今なおアメリカにおいて広く引用されるトクヴィル。本書は『アメリカデモクラシー』を中心にそんなトクヴィルの思想を読み解いていく。
フランスの保守的な家に生まれたトクヴィル。そんなトクヴィルは1830年からアメリカの視察旅行に出かけ、その経験を基に書かれたのが『アメリカのデモクラシー』だった。
トクヴィルが語る主題はデモクラシーと平等である。平等社会においても不平等は残っているが、トクヴィルは平等社会における不平等と不平等社会における不平等は質的に異なることを見抜き、平等社会においては平等化への絶え間ないダイナミズムが生じると主張した。その点において、トクヴィルは平等社会たるデモクラシーを擁護したのである。一方で、トクヴィルはデモクラシーの問題点をも分析している。デモクラシー社会においては権威がその基盤を失っていく。そうした中、他者から切り離された個人は、他者からの個人的な支配を嫌う一方で、非人格的な集団的な支配には隷属するようになる。この結果、「民主的な専制」が生まれる、と主張した。
トクヴィルはアメリカ社会を例に取りながらも理想的なデモクラシー社会を模索したということができる。主題はあくまでデモクラシーであったが、アメリカにおいて『アメリカのデモクラシー』は、理想のデモクラシー社会アメリカを描いたアメリカ論の古典として受容されていく。それゆえに今日の地位を築くことができたというのも一方で事実であるが、筆者はアメリカ社会に固有な性格に関わる箇所と、デモクラシー社会の本質を論じた箇所を識別して読む必要がある、と主張する。例えば地理的条件に起因する分権性と宗教精神と結びついた自由の精神は極めてアメリカ的な特徴である。そしてトクヴィルは、このアメリカ社会の特異性に安定したデモクラシー社会の運営に貢献する要素を見出したのである。その後彼は、安定的なデモクラシー社会を実現するために、結社や宗教、権利などについて議論を広げていった。
21世紀においてトクヴィルは極めて注目度の高い思想家である。それは格差の拡大と専制体制の台頭の中で、「平等なデモクラシー社会」というトクヴィル思想の主題が重要になっているからであると同時に、世界最大でありながら確たる思想的基盤を持たないとも言えるアメリカという国で、アメリカ社会の古典として党派を超えて参照されているからである。
トクヴィルは特異な受容のされ方をした思想家であるが、筆者の主張する通り、デモクラシー社会に希望を託した思想家として読むのであれば―今日的意義は大きいに違いない。
一言コメント
アメリカでこれだけ人気なのにもかかわらず、政治哲学の歴史の中で重要な位置づけを占めているかと言われるとそうではないように思えてしまい、トクヴィルという思想家には掴みどころのなさを感じていました。本書を読むと、トクヴィルがこれほどアメリカで参照されている理由がよく分かります。同時に、理論家トクヴィルから学ぶことは多いということも理解できました。デモクラシー社会が危機を迎えているといわれている今、トクヴィルについてはもっと学びたいと感じます。
2022/10/1