『古典文学をどう読むのか-シェイクスピアと源氏物語と- 』

基本情報

書名著者読了日評価分野
古典文学をどう読むのか-シェイクスピアと源氏物語と- 勝山貴之, 廣田收2022年1月8日⭐️⭐️⭐️⭐️Literature

読書メモ

シェイクスピアと源氏物語ー言わずと知れた東西の大文学である。本書はシェイクスピア研究者と源氏物語研究者の対談を通して、古典文学を読み、研究するとはどういうことかを探っていく。文学研究には様々な手法がある。例えば人物分析。ハムレットなどのシェイクスピア研究においては、人物に注目した性格分析は長年主要な研究手法であった。一方で、源氏物語では、各登場人物は物語内での役割を明確に負わされていて、独立した個、一貫した個として登場人物を捉えることは難しい。同じ文学といっても、書かれた時代が大きく違うがゆえの相違点がそこにはある。他にも、近年の文学研究の潮流としてニュークリティシズムが挙げられる。これは「作者の死」を前提とし、純粋にテキストのみを研究するべしという態度である。これに対して、国文学は民俗学とも切り離せず、テキストのみで考えるべきではないという批判がなされる。異なる時代、異なる文化によって生み出された作品を研究する2人の対談の中で、文学研究の手法と、作品の書かれた文脈に応じた読み方の個性が浮き彫りになる。同じ文学研究であってもこれほどに違うのかと驚かされる。本書の対談はこれから文学研究をする人に対するエールで終わる。文学研究は一般に役に立たないと思われがちであるが、テキスト一つとっても様々な読み方、研究の仕方があって、人間の深さを知る上で期待される役割は大きい。文学研究の発展を願いたい。

一言コメント

文学研究の奥深さが分かります。人文学が大切にされるような教養と余裕のある社会に生きたいと願います。
2022/10/1

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