基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
嘔吐 | ジャン・ポール・サルトル | 2022年7月2日 | ⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
不労所得で生活しており、ロルボン侯爵の伝記を書くことのみに力をかけている青年ロカンタン。この物語はロカンタンの一人語りの形式で進んでいく。
ロカンタンはアニーと別れて以来、孤独に暮らしている。数少ない人との関わりは、欲を満たすためのマダムとの夜と、図書館で出会う「独学者」との会話くらいである。そんな彼は時折理由の分からない「嘔吐」感を抱く。サルトル哲学的に言えば、「実存の苦しみ」と言えるだろうか。生に本質はなく、ただ「実存」していていることの苦しみだ。
そんな彼に「独学者」は、独自の哲学を説く。本質に先立つ実存がないのであれば、自ら主体的に世の中に投企せよ、そうして社会の中に生きるのだ、と。が、ロカンタンは「独学者」のヒューマニスト的な哲学を受け入れず、去っていく。
その後彼は過去の恋人アニーと久しぶりに再会し、何かが変わるのではないかと期待する。が、アニーも今や自由な「冒険家」ではなく、二人の関係が元に戻ることはなかった。
ロルボン侯爵の伝記も彼の人生に意味を持たせるものとはなりえない。そんな彼が最後意味のない実存に意味を持たせるために選んだもの―、それは小説という表現行為をすることだった。
この小説は必ずしも面白い物語ではない。ロカンタンが実存の苦しみに抗う中で、後にサルトル哲学と呼ばれるようになる考え方に出会う話であり、一世を風靡した「実存主義」がよく表現されているということができよう。ほとんどの人は「実存」の苦しみを味わうというほどに「実存」と向き合ってはいないだろうと思えるし、「実存」を考えすぎるべきではないと思うけれども、本書に表現されるようなサルトル哲学は今でも独特の魅力を放っていることは間違いない。
一言コメント
内容も難しいですし、小説として面白くはないです。が、サルトル哲学は今も魅力的だと思います。人生に迷ったらこの本を読んで実存について考えてみてもよいのかもしれません。
2022/10/2