基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
多様体 | 小笠英志 | 2022年1月10日 | ⭐️⭐️ | Mathmatics |
読書メモ
私たちは3次元空間に生きていると直感的に思っているが、それは決して自明なことではない。本書は空間そのものを一般的に扱った「多様体」の深淵なる世界の触りを紹介しているものである。
多様体を定義することは難しいが、例えば3次元多様体であれば、「図形であって、その図形に含まれる点は、どの点も、その点の周りは開球体になっているもの」と定義できる。3次元空間は、あらゆる点の周りが開球体になっているので3次元多様体に含まれるが、3次元多様体は3次元空間だけを含むわけではない。通常の球面である2次元球面の3次元版である3次元球面も3次元多様体に含まれるのだ。当然、3次元球面を3次元空間において図示することは不可能であり、補助的な図を用いて2次元球面から類推し、「頭で見る」しかないのだが、本書は様々な方法で「見る」ための手助けをしてくれる。3次元多様体は3次元空間、3次元球面だけというわけではなく、3次元トーラスなど、さらに複雑な図形を考えることが可能である。そして、本書はそうした複雑な図形をも「見る」ために様々な説明を付与しているのであるが、私には中々「見えない」のが実態だった。
本書の後半では議論がさらに難解になり、専門外の身には正直お手上げといった内容であるが、有名なポアンカレ予想なども登場する。
本書を通じ、現代数学・現代物理学の舞台である「多様体」の深淵な世界のほんの一端を垣間見ることができた。あまりにも難解で、本書の内容を理解できるようになることはないと思われるが、「3次元空間」という勝手な常識に囚われた人間には決して見えない世界があると知れただけでも価値があるだろう。理解できない、を楽しむのもまた読書なのだから。
一言コメント
内容は興味深いのですが、入門書でありながらあまりにも難解でした。高次元空間を「見る」ことは中々容易ではありませんね。これからも多様体を舞台として様々な数学・物理学の発見がなされることは間違いないのですが、少しでもその一端が理解できたら嬉しいなと思います。
2022/10/1