基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
現代アートとは何か | 小崎哲哉 | 2022年2月12日 | ⭐️⭐️⭐️⭐️ | Art |
読書メモ
スーパーコレクター、アート市場、キュレーター、アーティストまで、現代アートを取り巻くリアルを描く。本書で実名をあげながら語られている通り、現代アートは大富豪がこぞって買い求め、時に狂気的な値がつく。一部の大富豪の嗜好によってのみ現代アートの価値が決まり、大衆の感覚はそこには不在である。マーケットに押されるように、長年アート界の権威であった美術館も、大衆に迎合して単なる社交の場に成り下がっている。美術批評もまた力を失っている。このように価値判断に大きな問題を抱える現代アートであるが、作品を巡る主役はやはりキュレーター、アーティスト、オーディエンスである。キュレーターは優れた美術展の開催を通じて、アート史に名を残す。デュシャンが既存のアートの常識を破壊して以降、アートの役割は根本的に変わってきている。現代アートは全てコンセプチュアルであり、アーティストたちは知的活動を担う存在となった。一方的な鑑賞ではなく、見る側の想像力や関与を要求する現代アートにおいては、オーディエンスもまた作品を形作る重要なアクターとなっている。後半の章で、筆者は現代アート創作の動機を7種類に分別して示す。それは、「新しい視覚・感覚の追求」「メディウムと知覚の探究」「制度への言及と異議」「アクチュアリティと政治」「思想・哲学・科学・世界認識」「私と世界・記憶・歴史・共同体」「エロス・タナトス・聖性」だ。これらを基に、筆者は現代アートを最大限楽しむための採点方法を解説する。本書は現代アートを愛する筆者が、現代アートの光と闇、現代アートを巡るアクター、現代アートの楽しみ方まで、現代アートを語り尽くしたものである。現代アートには間違いなく構造的な問題や矛盾が含まれてはいるが、それでも現代アートが社会を良くする力を持つと信じたい。
一言コメント
現代アートについて包括的な知識を得ることができました。現代アートは問題も大ありなのですが、この本を読んでから現代アートの鑑賞を一層楽しめるようになった気がします。
2022/10/2