基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている | 左巻健男 | 2021年9月26日 | ⭐️⭐️⭐️ | Science |
読書メモ
世界史は化学でできている―、本書はそのタイトルの通り、世界史を化学の視点から読み解いたものである。
最初の方の3章は化学史に近いよう思われる。ギリシア哲学に始まって、メンデレーエフによる周期表、アインシュタインによる分子の実証まで、人類は万物の根源が何であるかを徐々に解き明かしてきた。この根源に迫る歴史自体が世界史を構成しているといっても過言ではないかもしれない。
第4章以降は化学の活用の歴史である。まず扱われる燃焼は人類にとって欠かせない現象だ。燃料革命によって人類は先史とは比べられないほどのエネルギーを得られるようになっていて、これが現代文明を支えている。次の章では身近な水を扱う。水は生命に欠かせない一方で、その汚染は感染症の温床にもなった。食料もまた化学と切り離せない存在である。料理とは化学の賜物でもあるのだ。ガラスや鉄、金銀といった人類を変えた素材もまた化学の産物であるし、現代文明は巨大な石油産業によって成り立っている。いうまでもなく、化学には負の一面もある。殺虫剤DDTは一時夢の物質だと考えられたが、その毒性が明らかになった。火薬の進歩は多くの人の命を奪った。その最たるものが化学兵器であり、核兵器である。人類は自らの種をも滅ぼす化学の力を得るに至ったのだ。
本書を読むと、化学がいかに人類の歴史を大きく変えてきたかがよく分かる。自らの生命を脅かすほどに、であはあるがー。これからの人類史もまた化学と絡まり合って展開していくのだろうか。興味は尽きない。
一言コメント
化学×世界史の本。こういう本が多く読まれれば、文理という不毛な区分で学べる内容が大きく制限されてしまう現状が少しは変わるかもしれません。
2022/10/2