『蒲団・一兵卒』

基本情報

書名著者読了日評価分野
蒲団・一兵卒田山花袋2022年6月26日⭐️⭐️Literature

読書メモ ※ネタバレを含みます

30半ばの小説家竹中時雄。妻子ある身でありながら、新婚の時の熱情はとうに冷め、仕事への熱意も薄れかけていた。そんな中、美しく、文学への情熱にあふれた女性芳子が彼の下に弟子入りを志願してくる。時雄はよき師を装いながら、芳子への道ならぬ恋に溺れていく。
時雄の芳子への恋は、一線は越えないまま続いていくが、芳子が田中秀夫という学生と付き合いを始めたことから状況が変わっていく。時雄は内心煩悶としながらも、二人の恋の擁護者として、芳子の父母に二人の関係性の維持を訴える。しかし、芳子と田中が肉体的な関係を持っていたと発覚し、当時の価値観では到底許されるものではなく、芳子は地元に戻っていく。彼の恋は終わり、また元の味気ない生活が戻ってきた。
本作品は作者田山花袋自身の体験を基に書かれたことで有名であるが、家庭を持ち、世間的に地位も高い中年の作家が、一回りも年下の弟子に恋情を抱く様子を赤裸々に描きあげた本作品はセンセーションを巻き起こしたであろうことは容易に想像ができる。
内面は激情に飲まれつつ、最後まで時雄は世間体を保ち続けた。中々描かれないが、世間的には立派とされている人の内面にもこうした激情があるというのは普遍的なものであるのかもしれない。

一言コメント

若い弟子への既婚者の横恋慕―、いやあ生々しいですね。これが自身の経験を基にしているというのが一層すごいです。傑作なのかはさておき、色々衝撃的な作品であることは間違いないです。
2022/10/2

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