『国際秩序』

基本情報

書名著者読了日評価分野
国際秩序細谷雄一2021年1月23日⭐️⭐️⭐️Politics & Law

読書メモ

”勢力均衡”、”協調”、”共同体”の3つの原理によって、どのように国際秩序が形成されてきたかを語る。ウェストファリア条約で主権国家体制が成立した後、一貫して中心的な原理は”勢力均衡”だった。覇権を求める存在(ルイ14世、ナポレオン)が出てくる度、周囲の国が同盟を組んで、勢力均衡によって抵抗する。ウィーン体制は”協調”と”勢力均衡”を特徴としたが、反動的な君主国と自由主義に寛容な国(イギリス・フランス)の間には必然的に理念の違いがあった。”協調なき均衡”を特徴としたビスマルクによる属人的な国際秩序の後、新興勢力ドイツは孤立し、第一次大戦に至る。ベルサイユ体制は、”協調”と”勢力均衡”を指向したが、バランサーとなるべきアメリカはヨーロッパから手を引き、賠償負担への怒りからドイツにナチス政権が成立するに至る。二次大戦後、ついに”共同体”原理に基づく国際秩序(国際連合)が成立した。冷戦期は確かに”恐怖による秩序”ではあったが、共通価値によって大国間では平和が保たれたのは事実である。冷戦後は、ハンチントンが述べるように、”文明の対立”が主要な脅威になる。現代の米中対立に目を向けるとどうなるだろうか?日米印豪による関係深化はまさに勢力均衡の枠組みである。国連という共通価値に頼りつつ、急拡大する中国を抑えられるか――外交政策の決定の上で過去の国際秩序がどう形成されたかを学ぶことには意味があるだろう。

一言コメント

高校時代にはかなり興味があった分野の本を再読しました。国際社会に秩序をもたらす枠組みを大きく整理した本書の内容からは学ぶことが多くありました。2022年3月6日現在、ロシアによるウクライナ侵攻が発生しており、国際秩序は大きく揺らいでいます。NATOという勢力均衡に基づいた抑止も機能せず、相互不信の中協調も難しい。常任理事国の行動に対しては国連という共同体も機能しない。難しい状況の中、国際秩序をどう取り戻すかが問われています。
2022/3/6

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