基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ドーナツ経済学が世界を救う | ケイト・ラワース | 2021年2月7日 | ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ | Economics |
読書メモ
GDPに代わる、これからの世界が目指すべき目標について語った本。
目指すべきはドーナツの図―すなわち、社会的基盤を充足させつつ、環境的基盤を損なわない範囲―に経済を収めることだ。筆者は今まで経済学者によって作られてきた物語を強く批判する。①市場は完璧ではない。②企業は株式価値の最大化ではない目的を持つ必要がある。③国家は大きな役割を持つ。④家計や社会の貢献を無視してはならない。(”社会はある”)⑤地球は全ての基盤で資源は無尽蔵ではない。それだけではなく、経済学者の唱えるホモ・エコノミクスは誤りだ。人間は合理的ではなく、ヒューリスティックスの役割を過小評価してはならない。社会的動物でもある。経済学でいう”均衡”なるものも存在しない。存在するのは複雑系のシステムだけだ。
続けて筆者は、不平等と環境に関する経済学者の仮説―経済成長にしたがって不平等や汚染が進行するが、さらに豊かになることでそれが解消される―を反証する。環境も不平等の問題も発展段階から取り組まなければならない。
最後に筆者は、ロストウの経済発展モデルにおいて、成長しないモデル(サーキュラーエコノミー)に”着陸”させるべきだと提言する。間違いなく、成長しないことを受け入れることはとてつもなく困難だ。しかし、この地球で人類が生きていくうえでは、筆者の目指す社会は確かに望ましいと感じさせられる。未来の指針になる書。
一言コメント
資本主義システム(中でも新自由主義)批判は広く主張されていることではありますが、ドーナツの図という非常にわかりやすく視覚的なモデルを導入した効果は大きいのではないでしょうか。GDPではなく、ドーナツの図を使って将来像を語る、そんな世界になってほしいと思います。
2022/3/6