基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
オリヴァー・ツイスト | チャールズ・ディケンズ | 2021年3月12日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
救貧院で悲惨な境遇の中生まれ育った孤児オリヴァー・ツイストの人生を描いた物語。オリヴァーは悲惨な境遇の中でも純粋な心の少年に育ち、周囲の”教区の紳士達”の冷酷さとの対比により、その異質さが際立って見える。そんなオリヴァーは救貧院から奉公に出された家を抜け出し、盗賊団の首領フェイギンに拾われる。オリヴァーは盗賊団から抜け出し、心優しいブラウンロー氏やメイリー夫人の下で一時の幸せを得るが、フェイギンと悪党サイクスは協力者ナンシーの手引きでオリヴァー・ツイストを取り戻そうとする。彼らがこれほどまでにオリヴァーにこだわった裏には、オリヴァーの出生の秘密―オリヴァーは豊かな紳士の隠し子だった―とその事実を抹消しようとする兄モンクスの陰謀が存在したのだ。ナンシーの密告とその後の悲劇があり、全登場人物が相まみえる大立ち回りの末、物語はハッピーエンドを迎える。一冊を通し、善なる人々―純粋な少年オリヴァーとブラウンロー氏などの周囲の大人―と、悪なる人々―フェイギンやサイクス、バンブル氏―の対比が明確に描かれ、大きな勧善懲悪物語としての体をなす。今の感覚だと物語の流れがやや粗削りな印象を受けるが、都市部で悲惨な貧困が問題となっていた19世紀末にあって、オリヴァーの純粋さは大きな社会的影響を与えたのではないか。イギリス最大の文豪と言われる理由はわかる。
一言コメント
文豪ディケンズの作品。悲惨な貧困状況を描いたリアリズム作品としては、やや現実味に欠ける点においてゾラなどの作家に劣る感触を受け、勧善懲悪のエンタメ小説としては、他にもっと面白い作品があるのではないかと感じさせられてしまいます。が、純粋で善なる少年が、周囲の優しい人々に助けられ、悲惨な境遇を脱していく物語は、貧困の悲惨な実態があった中で求められた”現実であって現実ではない”物語だったのかもしれません。
2022/4/30