基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
テス(上) | ハーディ | 2021年4月9日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
テス(下) | ハーディ | 2021年4月13日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
(上)
美しく心優しい田舎娘のテス。彼女の悲惨な運命を描く。ふとした偶然から、ダービーフィールド家がダーバヴィル家の末裔であることが分かり、紆余曲折があってアレク・ダーバヴィルの手による悲劇が起こる。悲劇の後テスは乳搾り娘として生きるが、次第にクレア青年に惹かれ、クレア青年もテスに惹かれていく。テスは過去の罪を心に秘めながら―。上巻は、新婚の夜テスが過去の罪をクレアに打ち明けるところで終わる。クレアは彼女の告白を受け入れるのか?幸せに満ちた描写はその後の悲劇を予感させる。
(下)
テスの下巻。テスの過去の罪を聞いたクレアは彼女を許すことができず、ブラジルに去る。その間彼女は貧しく悲惨な生活を送り、再度アレク・ダーバヴィルの手に落ちてしまう。手紙でテスの訴えを聞いたクレアはテスを訪ねて戻ってくるが、あまりにも遅すぎた。最後は一瞬の幸福の後、悲惨な結末を迎える。テスは魅力的なヒロインで、全く罪がないのに運命に翻弄される様子を想像すると、気分が沈む。彼女の周りの人々もまた、悲劇の当事者だ。クレアは狭量な理想主義者だが、テスを許すことができない倫理観は当時の感覚からすれば仕方ないのではないか。アレク・ダーバヴィルはテスを破滅させた悪として書かれるが、彼女の家族への支援は惜しまず、情熱的な愛の被害者でもあった。テスの父は愚かだが、旧家の栄光に縋りたくなる弱さは理解できる。誰にも悪意がなかったとしても、現実は容赦がない。心には残る重い作品だった。
一言コメント
純粋で美しい心を持ったテス。悲劇のヒロインという言葉がこれほど似合うキャラクターは他にいないかもしれません。これだけ気分の沈む作品が読み継がれていることを不思議にさえ思います。ただ、少なくとも心には残ります。
2022/4/30