基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
百人一首解剖図鑑 | 谷知子 | 2021年4月25日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ
百人一首について解説した本。
100首を時系列で追っていくと、歌の変化を感じさせられる。粗削りで率直な心を表現した万葉時代。和歌の評価がまだ低かった平安初期を経て、和歌は摂関時代に全盛期を迎える。この時代は女官として仕えた女性たちによって、素晴らしい恋の歌が数多く詠まれた時期でもあった。その後、時代は武家の世、不安定な世に向かっていく。女官による恋の歌の数は減り、憂き世や詠み手の内面を歌った歌が増えていく。同時に、実体験ではなく、テーマに沿って詠まれた技巧的な歌が中心になる。最後は、敗北した後鳥羽院と順徳院の歌をもって無常観の漂う幕切れとなる。百人一首には、まさに和歌の歴史が表されているのかもしれない。
100首を読み終わった後、摂関政治の時代が、まさに「しのぶにもなほあまりある昔」に感じられるのは、気づかぬうちに定家の心に共感させられてしまっているのだろうか。
一言コメント
百人一首の本は数多く読んでいるので、この本もその中の一冊という以上の印象はありませんが、何冊読んでも飽きないというのが百人一首の魅力なのかもしれません。何冊解説書を読んでも、百首とその意味、作者、エピソードまで全部覚えるのは到底不可能なのですが、つい覚えたくなってしまうのは百人一首の沼にどっぶりハマってしまっているのかもしれません。
2022/4/30