基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ビッグの終焉: ラディカル・コネクティビティがもたらす未来社会 | ニコ メレ | 2021年6月13日 | ⭐️⭐️⭐️ | Economics |
読書メモ
ラディカル・コネクティビティにより、ビッグが終焉する。全てのビッグが―。
ニュースは巨大メディアに支配されていたが、個人が直接発信する手段が増えたことで、ビッグニュースは崩壊しつつある。情報の分散はチャンスではあるが、信頼できる情報がない不安定な時代にも向かいうる。政治面でも、草の根の政治活動が増え、ビッグパーティが崩壊する。絶対的なエンターテインメントと呼べるものはなくなり、ビッグファンの時代は、多くの発信者・少ないファンの時代にとって代わられる。政府や軍でさえ、ウィキリークスやサイバー攻撃によって脅かされつつある。ビッグマインドも崩壊し、絶対的に信じられる権威はもはや存在しない。オープンソースや生産の民主化・分散化により、ビッグカンパニーもこれから続くとは限らない。
こうしたビッグの崩壊のシナリオは説得力があるように見えるが、2021年から振り返ってみると、思っていたよりビッグはしぶとかったのかもしれない。確かに、ビッグニュースは崩壊しかけているが、企業や政府といった組織は変わらず力を持っている。2021年になってなお、社会現象とも言えるほどのビッグエンターテインメントが生まれた。筆者はテクノロジーの力を過大評価していたのかもしれない。どれだけ繋がりがあっても、技術の力でゲームのルールを変えられる個人は、決して多くはない。ビッグの権威に追従する無力な大衆はきっとビッグの最大の味方だ。
予想の全部は当たっていない。それでも、ラディカル・コネクティビティの革命的な力を説いた本書は、これからの時代を考える上重要であり続けるに違いない。
一言コメント
かなり前に読んだ本の再読です。2021年になって、その後の展開を知ってから読み直すと、また新たな感想を持ちました。筆者は「ネットワーク」によってビッグが崩壊すると述べていますが、現実はそれほど単純ではなかったというのが今時点での感触です。ネットワークによって個人が力を持つのではなく、ネットワークを支配するIT企業や、ネットワークを規制する権威主義的な政府、世論に影響を持つ組織の力こそが強く残っているように思います。未来を予想することは難しいですね。
2022/5/1