基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために | ドミニク・チェン, 渡邊淳司 | 2021年6月13日 | ⭐️⭐️⭐️ | Psychology |
読書メモ
Well-being―よく生きる―とは何だろう。様々な心理学の研究により、Well-beingを構成するとされる要素は明らかになってきている。そこには自律性や有能感と言った個人の内面に閉じた要素に加え、他者との関係や、社会貢献などの超越的要素も含まれる。Well-beingの研究が進んでいる一方で、伝統的なWell-being観は個人主義的な傾向が強すぎるという問題がある。
本書は、日本という文脈を踏まえながらWell-being概念を見直し、個人としてだけではなく、共として(コミュニティとして)、Well-beingを達成するにはどうすればよいかを考察する。その上で特に重要となるのがテクノロジーの活用の仕方だ。SNSやターゲティング広告は、人間の注意を奪い、フィルターバブルなどの悪影響を与えている。人の自律性を保ちながら、倫理的な方向にナッジする。それによりWell-beingに寄与するようなテクノロジーの活用の仕方はあるだろうか。
本書で例として挙げられているのは、オンライン通話中に状況に合った表情に変化させる「FaceShare」や、「弱いロボット」、個人データの利用規制などである。テクノロジーによってWell-beingをデザインすること。Well-beingを考える上では、日本の集産主義を考慮し、人とのつながりを大事にするような仕組みにすること。これからの時代に非常に重要な教訓であるに違いない。
一言コメント
Well-beingと言えばSDGsの重要テーマでもありますが、それを構成する中身については数々の研究が蓄積されてきています。その中でも、本書で述べられていた、「共として」というのは一つ重要な視点であるように思います。本書の後半ではWell-beingを実現するためのテクノロジーについて語られていますが、一応にもIT業界に身を置くものとして、関心を持って見ていきたいところです。
2022/5/1