基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
三体問題 | 浅田秀樹 | 2021年6月26日 | ⭐️⭐️⭐️ | Mathmatics |
読書メモ
三つの天体の動きを計算することはできるか―それが三体問題だ。二体問題はニュートンの万有引力理論によって(ほぼ)解かれ、その後ベルヌーイの手によって理論として完成した。それでは三体問題も二体問題と同じように解けるのか?そうではない。三体になったとたんに問題は恐ろしく難しくなる。
三体問題となると、運動方程式に他二天体の位置が入ってくる。加速度は位置の二階微分であるが、このように複雑に絡み合った微分方程式を解くことは極めて困難だ。それでも過去の賢人たちは解に近づこうと努力してきた。オイラーは天体の直線状の配置を仮定し、制限三体問題における直線解を求めた。ラグランジュも制限三体問題のラグランジュ解を求めた。こうした解は現在の宇宙開発にも利用されている。
そうした努力はあっても、運動方程式から直接的、解析的に三体問題の一般解を求める困難さが軽減されたわけではない。別のアプローチとして、近似解を求めることはできないのか。ポアンカレによると、そうした逐次解、級数解でさえ存在しない。そうなると、三体の動きを十分後まで予測することは不可能だということだ。初期条件のわずかな違いが大きな差異を呼ぶ、カオス理論の世界になる。
では、20世紀以降三体問題はどのように展開したのか。一つ目が特殊解の発見。例えば8の字解という不思議な解が存在し得ることが発見された。二つ目は一般相対性理論の登場。時空が相対的であることを考慮して三体問題が組み立てられ、修正された三角解や8の字解が発見されている。最後の一つは位置天文学の発展だ。系外惑星の観測や重力波の観測が記憶に新しいが、どんどん新しい天文学が生まれてきている。
簡単そうに見えて難しい三体問題は、今後どこに向かうのだろう。画期的な理論によって解析的に解かれる日は来るのか。観測によって未知の軌道が発見されることはあるのか。三体問題がどのように進展するのか楽しみで仕方ない。
一言コメント
二体問題は簡単なのに、三体問題は極めて難しいというのは不思議に思えますが、2と3を同じように考えてしまうのが線形思考に囚われているのかもしれません。今なお三体問題が研究されているというのは不思議でなりませんが、今後どんな進展があるのか楽しみになりました。
2022/5/1