基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎 | 村山斉 | 2021年7月31日 | ⭐️⭐️⭐️ | Science |
読書メモ
宇宙というものすごく大きな世界の秘密を解き明かすカギは、ものすごく小さな世界にある。極大な世界を扱う宇宙論を深めていくと、極小の素粒子論に行きつくのだ。本書は宇宙論と素粒子論の基礎を分かりやすく説明する。
20世紀初頭に「2つの暗雲」が物理学を覆っていたように、21世紀初頭の宇宙論は「いかに我々が宇宙のことを全く知らないか」が分かってきた状態だ。宇宙に存在する暗黒物質については全く正体が分かっていない。宇宙を加速膨張させている暗黒エネルギーについてはさらに謎に包まれている。
そんな宇宙の謎を解き明かすには、極小の世界の仕組みを知る必要がある。それは、宇宙の始まりは小さく熱かったからだ。極小の世界を知るための武器は加速器である。人類は加速器実験により、素粒子の謎に迫り、その過程で、宇宙に存在する4つの力の仕組みも少しずつ分かってきた。CP対称性の破れという小林・益川理論が証明されたことで、素粒子標準理論はおおむね完成したが、まだ謎は残っている。電磁気力と弱い力の圧倒的な不均衡はなぜ生じるのか、などだ。
本書は最後、未だに残る宇宙論の謎を説明して終わる。あまりにも弱い重力を他の3つの力と統合する理論は全くできていないし、暗黒物質・暗黒エネルギーの謎も残っている。物質はあっても反物質がない理由もわかっていない。
マクロの世界の謎がミクロの世界の実験によって少しずつ解き明かされていく過程は非常に面白い。本書が執筆された2010年時点からも、ヒッグス粒子の観測や重力波天文学の創始といった新しい動きがあった。21世紀に宇宙論を覆う暗雲は、今後どのような新しい理論を生むのだろうか。
一言コメント
宇宙という極大の世界の謎を解くカギが素粒子の極小の世界にあるというのは本当に不思議です。宇宙論の今後が気になります。
2022/5/1