基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
言ってはいけない宇宙論 | 小谷太郎 | 2021年8月1日 | ⭐️⭐️ | Science |
読書メモ
本書は、現代物理学が未だに残す謎について語る。
大統一理論は陽子崩壊を予言しているが、カミオカンデ実験は陽子崩壊の兆候を全く捉えられず、新たな理論が求められている。(カミオカンデは代わりにニュートリノを観測し、それが基で2つのノーベル賞が生まれた。)
ブラックホールが蒸発するかは全くの未知である。ブラックホールの情報パラドックスを解消する理論を、人類は未だ持っていない。
量子力学は非常に有用な理論であるが、その根底の仕組みに対する解釈は割れている。波動関数の収縮を仮定するコペンハーゲン解釈が一般的ではあるが、エヴェレットの多世界解釈も多くの信奉者を抱えている。この仮説は実証しようがないため、論争が終わることはないだろう。
宇宙が定常的かは長く論争になってきた。宇宙が加速膨張しているという最新の観測結果と、ビックバンの残り火である宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙は非定常であることを示しているが、そのことはさらなる謎を生んでいる。暗黒物質と暗黒エネルギーは宇宙質量の95%を占め、正体について様々な仮説が提示されてきたものの、未だに謎のままだ。
重力と量子論の統一は非常に難しい。重力が弱すぎるがゆえに、量子サイズで重力効果を観測するには、加速器のエネルギーが足りそうにない。宇宙という実験場で発生する重力波のような現象が、謎を解き明かすカギとなるだろうか。
なぜ我々の住む宇宙、地球はこんなにも都合がいいのかという問いに対しては、人間原理以外の有効な解決策は提案できていない。
本書で様々な観点から述べられているように、宇宙は全く分かってない。だからこそ宇宙論は面白い。
一言コメント
我々人類がいかに宇宙を全く分かっていないかということがよく分かります。ただ、これだけ知らないことが分かったことそれ自体が前進であったのかもしれません。これらの謎が今世紀中に解かれることはあるでしょうか。
2022/5/1