基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法 | ポール・ホーケン | 2021年8月9日 | ⭐️⭐️⭐️⭐️ | Global Issues |
読書メモ
地球温暖化を逆転させ、人類を破滅から救うためには何をすればよいだろうか。本書はそのために人類が採用するべき100の方策を解説したものである。本書の特徴は何より、科学的であることである。地球温暖化問題については、「もう何をしても破滅は避けられない」といった過度に悲観的な論調や、「技術がいつかすべてを解決してくれる」といった過度に楽観的な論調で語られることもある。本書はそのいずれにも与しない。確かに地球温暖化を逆転させるのは極めて困難で、何か一つの分かりやすい解決策があるわけではない。できるのは実現可能な解決策を積み重ねることだけだが、それによって運命を逆転させることはできるのだ。その論拠として、本書では100の解決策を提示し、それぞれの炭素排出減インパクトを科学的に算出する。
100の解決策はインパクトによって順位づけられているが、上位は1位冷媒、2位陸上風力発電、3位食料廃棄の削減、4位植物性食品を中心にした食生活、5位熱帯林、6位女児の教育機会である。冷媒や女児教育については地球温暖化対策として注目されることが少ないため、意外性を感じるところだ。
解決策に共通していることは、個人にできることは大きいということ。人々の食生活や日々の移動が環境に与えている影響は大きい。そして、単純系より複雑系のシステムを採用するべきだということ。化学的肥料を使い、一年生作物のモノカルチャーを行うことは非常に分かりやすく食料生産性を上げる方法だった。が、そうした近代的な手法は土地の炭素吸着力を大幅に低めてしまった。アグロフォレストリーのような様々な生命が共存する複雑系のシステムを採用することで、生産性と土地の炭素吸着力を上げることができる。その土地ごとに変わる複雑な土地管理を実現することが今後のカギになるだろう。
地球温暖化を逆転させることは極めて困難だが、現人類にとっては急務である。希望を失わず、進むべき道を提示した本書は人類の指針になるに違いない。
一言コメント
地球温暖化を止めるためのそれぞれの施策について、科学的に効果を試算した本です。これらを一つ一つ実践していくことによってのみ、地球の運命を変えられるのでしょう。環境問題を考える上でまず読むべき本です。
2022/5/1