基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ダブリナーズ | ジョイス | 2021年12月11日 | ⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
ダブリン市民の何気ない日常を描いた短編集。恋人と遠くの国へ行こうとする若い女性や、豪快な友人の人生に憧れる中年の男など、ダブリンに暮らす全く違う人々の人生が描かれる。そうした何気ない日常が続いた後、最終章の「死せるものたち」では、恋人の告解を聞いたゲイブリエルという男が、生けるものと死せるものが連綿と紡いできた世界に思いをはせる。彼の精神は、雪が「生けるものたちと死せるものたちにもあまねく」降り落ちていくのを聞きながら、空間的にも時間的にも超越し、感覚を失っていく。ここで前半で描かれた何気ないダブリン市民の日常が「生けるものたちと死せるものたち」となって明瞭に浮き上がってくる。最後のたった数行で、一気にスケールが広がっていく描写、それを際立たせる構成は見事と感じさせられる。
一方で、時代も文化も共有していない人間には、本書を通じて描かれている20世紀初頭のダブリンの魂は理解ができないのがもどかしい。前半の14編は読むのが苦行でさえある。
ジョイス作品は難解と言われるだけあって、本書の魅力を十分に理解できたとは全く思わない。が、前半の日常から、最後全てを超越していく描写からは、どこか本作が傑作と言われる理由の断片を感じることができた気がする。
一言コメント
ジョイスは20世紀最高峰の小説家とたたえられますが、難解すぎて娯楽として楽しむのは難しいかもしれません。この作品もどの程度読めているのか正直微妙です。ジョイス作品を理解できるようになりたいですね。
2022/5/4