基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
すべての季節のシェイクスピア | 松岡和子 | 2022年5月15日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ
シェイクスピア研究者の筆者が、シェイクスピア作品の魅力を語り尽くす。
「ロミオとジュリエット」はあまりにも有名な作品であるが、ジュリエットの年齢が13歳として設定されていることはあまり知られていない。そして、劇中で出会いから悲劇の結末までの期間はわずか5日間だ。なんと若く、短い期間の激情だろう。
「オセロー」のデズデモーナもまた若いヒロインで、オセローとの結婚生活もわずかな期間で終了する。イヤゴーの姦計にあっさりとはまっていくオセロの愚かさが目立ってしまう作品だが、デズデモーナの若さと純真さを考えると、死の淵にあって彼女が発した叫びが一層心に刺さるのだ。
「マクベス」は運命によって身に合わない王位を目指してしまった男の悲劇である。マクベスの人生も魅力的ではあるが、「マクベス夫人はシェイクスピア作品に登場する女性で唯一名前を持たない」ということを知ると、途中までマクベスを励まし、王暗殺計画に駆り立てたマクベス夫人が、最後には蚊帳の外になっていく現実が切なく響く。
「ハムレット」の主人公ハムレットは「見られる」主人公だ。彼は宮廷中から注目され、その中で逆に視線を返す。複雑に交差する視線の中、劇中劇までもが交えられることで、観客を含めたハムレットという劇の重層性が生まれるのだろう。それゆえハムレットの演出は様々で、それぞれに魅力があるのだ。
一冊を通し、シェイクスピア作品への愛が伝わってくる。シェイクスピア作品は普通に読んでも面白いが、一層シェイクスピア作品を読みたくなった。
一言コメント
シェイクスピア作品っていいですね。作品を読んだ後にこうした文学研究者による感想文を読むと、一層その魅力が伝わってくるように思います。
2022/10/2