基本情報
書名 | 著者 | 読了日 | 評価 | 分野 |
ミゲル・ストリート | V・S・ナイポール | 2022年9月10日 | ⭐️⭐️⭐️ | Literature |
読書メモ ※ネタバレを含みます
ノーベル文学賞作家V・S・ナイポールによる本作品の舞台はトリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペイン。ミゲル・ストリートは街に無数に存在するストリートの一つである。本書はミゲル・ストリートに暮らす普通の人々の暮らしを描いたものだ。
名前のないものを作っている大工ポポ、進学が叶わずゴミ収集カートの運転手になったエリアス、詩人ワーズワース、花火技術者モーガン、そしてストリートのグループのリーダー役であるハット。様々な人々が登場する。彼らの生活には憎めない明るさがあるが、一方で閉塞感があり、とりわけそれが女性や子どもを含む他者に対しての暴力として現れている。主人公もストリートの生活を楽しむが、そこが一方でガラが悪く、先がないことも分かっている。幸いにして外国の大学に合格した主人公がミゲル・ストリートを去っていくところでこの物語は終わる。
この物語で書かれるミゲル・ストリートの生活は確かに明るく楽しいところもあって、エキゾチックな異国の無垢な暮らしを称賛したいような気持ちになるけれども、彼らの暮らしは決して上品ではなく、やり場のない怒りからの暴力的な行動で傷ついている人たちがいるのもまた事実である。
そんな複雑な感想を抱きつつ、遠いトリニダード・トバゴの風情にしばし浸ってみるのもいいかもしれない。
一言コメント
トリニダード・トバゴのストリートに生きる人々を描いた作品です。温かみがある一方で、どこか閉塞感もあって、彼らは果たして幸せなのかと思わず考えてしまいます。
2022/10/2